患者さんの栄養状態を把握することは栄養管理業務で最も大切なこと、と言っても過言ではありません。
生体予後にも影響することから、正しく栄養状態を評価する必要があります。
栄養状態を評価する際に指標として使われてきたアルブミン(ALB)ですが、近年の専門家の意見ではその考え方は否定されています。
しかし現在もアルブミンやプレアルブミンの値で低栄養と判断している施設も多くあるようです。
今回はそんなアルブミンについて解説していきます。
この記事を読めば、アルブミンとは一体なんなのかを知ることができます!
目指せアルブミンマスター!
そもそも血清アルブミンって何だろう?
アルブミンは肝臓で合成される血清総たんぱくの約60%を占めている最も成分で、栄養状態を評価する指標として最も使われる検査項目です。
多くの場合にはアルブミンが低下すれば栄養状態の低下、上昇すれば栄養状態の改善と評価することができます。
実際に低栄養のリスク判定にも3.6g/dL以上は低リスク、3.0g/dL未満は高リスクの判定になります。
しかし、アルブミン値の変動は栄養状態以外にもおこるため一概に「低い=低栄養」とは言い切れません。
正しい栄養評価を行うためにもアルブミン値を正しく読み取る必要があるんですね!
アルブミンが低いとどうなるか
アルブミンの2つの役割から考えると簡単です。
- 浸透圧の維持
細胞外液の内訳は25%が血管内、75%が間質です。
アルブミンは血中の水分量を調整してそのバランスを保っています(浸透圧の維持)。
アルブミンが低くなると、バランスが崩れて血管内の水分が間質に移動して浮腫が発生します。
ちなみにアルブミン1gで約20mLの水分を保持することが可能と言われています。 - 物質の運搬
脂肪酸、ホルモン、ビリルビン、薬物などと結合して各組織へ運搬します。
アルブミンが低くなると各組織への栄養や薬、ホルモンの運搬が不十分になってしまいます。
役割を考えるとわかりやすいね
ここからは変動の要因について詳しく解説していきます。
血中に入る量と出ていく量の差で血清アルブミン量が決まる
入る量と出ていく量?どういうこと?
まずアルブミンはどのように作られるのかを復習します。
- 食事(たんぱく質)を摂取する
- 消化管で消化されてアミノ酸になる
- 吸収される
- 肝臓へ運ばれる
- アルブミンに合成される
合成されたアルブミンは通常血中で浸透圧の維持やホルモンや脂肪酸の運搬を行う役割を担いますが、
熱発や組織の合成の際には、血中から組織などに供給(移動)され出ていきます。
また尿や出血などからもアルブミンは流出することもあります。
それらによりアルブミン値の値が変動してきます。
ここからはアルブミンが低くなる要因を5つ説明します。
アルブミンが低下する5つの要因
- 食事摂取量低下
たんぱく質(アミノ酸)量が不足していて合成できない
食事摂取量(たんぱく質)が不足することでアルブミンを作る材料が不足している状態です。
ちなみに食事摂取不良でのアルブミン低下には貧血が合併していることが多くあるため、ヘモグロビン値(Hb)の値も確認するとよいでしょう。 - 炎症、熱発などによる異化亢進
合成量より消費量の方が多い
炎症や熱発により組織のたんぱく質が消耗されていくと、それを補うために血中のアルブミンが組織に供給され低アルブミンになることがあります。
CRPや熱発の有無を確認します - 消化吸収障害
肝臓まで十分に供給されず合成できない
消化吸収障害により、アミノ酸が十分に肝臓にまで達していないことがあります。
食事は十分に摂取できているのにアルブミン値が低い、低アルブミンになるような病態もない場合は疑ってみるとよいでしょう。
消化吸収傷害の疑いがある場合は便性状や代謝異常などがないか確かめる必要もあります。 - 肝臓障害
合成量が低下
肝機能障害がある場合はアルブミンの生成ができない状態にあるため、十分な供給もできません。
肝硬変や肝炎などの病態がないか確認します。 - ネフローゼ症候群
流出量が増加
ネフローゼ症候群は腎臓のろ過機能が障害されてしまう病態です。
アルブミンも再吸収できずに尿として排出されてしまいます。
尿アルブミンが高値であると、腎機能障害が疑われます。 - 胸水、浮腫
体腔内へのアルブミンが流出
何らかの原因でアルブミンが体腔内へ漏出してしまうと、胸水や腹水をきたします。
アルブミンには水を抱え込む性質があり、1gで20mlの水を保持します。
逆に血中アルブミンが低いことで血中水分が体腔内へ移動して胸水や腹水の増悪をもたらしてしまいます
アルブミン値が正常値でも低栄養?
アルブミンは正常値だからといって安心もできません。
脱水により血液の濃縮されているとアルブミンも高い値を示す場合があります。
低栄養の疑いがあるのにアルブミンが高値の場合は、これらも脱水により高値となることが多いので確認するとよいでしょう。
- BUN(尿素窒素)
- Na
- Cl
血液検査以外にも脱水により起こる症状などもあわせて判断する必要があります。
水分摂取量と尿量のチェック(in-outバランス)などの対応をとりましょう。
- 口渇
- 頭痛
- 食欲不振
- 全身倦怠感
- 嘔気
アルブミン値は現在の状態を示すものではない
アルブミン値の数値は採血した日の21日前の状態のものです。
アルブミンの半減期(血中の中で半分になる期間)が21日だからだね
例えば21日前までは食事摂取良好だった患者さんが1週間前から殆ど食べなくなった場合、
アルブミン値はそれほど低下していないこともあります。
今後低下してくる可能性があるため、安心はできません。
3週間前の状態が反映されていることを忘れないようにしましょう。
アルブミン値に頼らない栄養評価
2020 年にASPEN(米国静脈経腸栄養学会)は「アルブミンは栄養状態を示すものではなく炎症を示すものである」と、栄養状態を正確に表しているとは言えず、栄養指標として用いないことを推奨しています。
体重の増減、食事摂取量、筋肉量、皮下脂肪など、複数の項目を組み合わせて栄養状態を評価する必要があります。
正しい栄養状態を知ることで正しい栄養計画を立てることができます。
様々な症例があることを念頭におき、多面的に栄養状態の評価を行っていきましょう。
栄養状態はGLIM基準で確認しよう!
GLIM基準に関する疑義解釈は下記を参照してください。
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